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土と微生物、そして「農」について

土の合理性が生む正のスパイラル
 

 土とは、土壌とはなんなのか。その正体は意外と知られていません。

 土は岩石が風化によって砕かれたものに、雨の影響などで染み出した物質が混じり、動植物の死がいや微生物の分解物が加わって、気の遠くなるような長い年月をかけて出来たものです。森林などの土は地球上の生き物の営みによって、田畑果樹園の土はさらにそれらを人がお世話することによって作り上げられました。つまり、土は単に岩を砕いて集めれば出来るというものではありません。
  自然の営みの中で月日を経て、土のもとになる岩石からは様々なミネラル分が染み出して再結晶化しました。それらは、土の中に混じっており、植物の養分の元となっています。また、土の上で育った動植物は、その死骸を有機物として土に戻します。その有機物を微生物が分解することで植物の栄養素となったり、分解しきれないで残ったものは腐植という後に述べる団粒構造を作り上げる材料となります。
  良い土は、団粒構造という小さな土の塊が隙間を持った状態を保っています。団粒構造は、様々なサイズの土壌粒子がミミズなどの糞や腐植などによってくっつきあって、お団子のような構造になったものです。この団粒構造があると、団粒の塊と塊の間にできる適切な隙間が、雨が降った後などは余分な水を流し、雨がないときは適切な水分を保持するので、土に排水と保水の両方の効果をもたらしてくれます。同時に、程よい量の空気をはらむので、植物の根や微生物に酸素を与えてくれます。また、この隙間があることで、土は植物の根の成長を妨げない、適度な柔らかさを持つことが出来ます。
  このように、土は、鉱物と有機物と腐植、微生物と水と空気の集合体である言えます。つまりは、土は単に植物の根を固定するだけの粒子なのではなく、植物に必要なな養分と水分、空気をあたえ、様々な小動物や微生物のすみかとなるものです。昔から人々は、この自然循環の素晴らしい機能に気付いて、それを最大限に発揮させようとする「土づくり」を行ってきました。
  逆に、団粒構造が不足し、小動物や微生物に乏しいものは良い土とは言えず、植物を健康に育てることは出来ませんし、自然のバランスを欠いて様々な問題を引き起こします。たとえば、団粒構造を著しく失った土は、降雨時には余剰水の涵養機能が働かなくなるので、畑の表面を水が走って川のようになってしまいます。そういった土は雨があがったらすぐに乾いてしまって、酷いときにはひび割れを起こし、風が強いときは砂煙を巻き上げます。適切な空気と水分がないので、微生物が住めなくなって有機物はうまく分解できずに蓄積して、過剰になると地下水を汚染するなど周辺環境に悪影響を与えてしまいます。
 昨今は、安価な農産物を安定供給するために、農薬や化学肥料といった化学物質を乱用し、土壌消毒によって土の微生物を排除して無理な連作を行うことで、上記のような本来土が持っているべきすばらしい機能を破壊してしまっています。確かに根が固定されていて、水と化学肥料の養分があれば、形ばかりの植物は育ちます。しかしながら、それはサプリメントだけ食べて育つのと同じで、健全な植物とは言い難く、何より美味しくありません。しかも、グローバルな観点からみれば、環境破壊の原因となって、人間を含むすべての生き物を生活しづらくさせます。

 大自然の恵みを受け、素晴らしい土で育った植物は、適量の水と空気の中で生き生きと根を伸ばし、様々な微量要素を吸収して元気に育ちます。だからおいしい。元気で長持ちする。そのうえ、土壌微生物や小動物も豊富で、生物多様性を支える原点となり、地球環境が保全されます。良い環境は良い植物を育てますから、さらにおいしい植物を育てる、正のスパイラルが生まれるわけです。

 

▲ 土は自然の営みの中、長い年月をかけて作られます

 

 

▲ 土は団粒構造を作り、空気と水を含みます

 

▲ 生物性が乏しいと強風時に土が舞い上がります

 

▲ 微生物は働き者!

 

▲ 土の中のDNAを蛍光染色して顕微鏡で見た写真
星の数ほど生物がいることがわかります

 

▲ 豊かな土で育った農産物は、美しく元気で
なにより、とってもおいしい!

現代農法の盲点だった土の生物性

 土の性質は、化学性、物理性、生物性の三つの要素で示されます。土の化学性とは、土に含まれている養分や、pH、電気伝導度(EC)などのことです。一般に土壌分析というと、この化学性のことを示します。土の物理性とは、土の硬さや粒状分布、保水性、排水性などのことです。これら二つについては、今では簡単に分析することが出来るので、調べて適切な方法をとることで、農業生産性の向上に寄与してきました。
  残りひとつ、土壌の生物性とは、土の中に生息する土壌微生物やミミズや昆虫などの小動物の世界のことです。これについては、目に見える小動物を調べる程度しかできませんでした。特に微生物の世界は非常に分かりづらく、謎のままでした。
 現代農法は、化学肥料や土木工事による排水や機械による耕うんによって、土壌の化学性と物理性については、人工的な改良を加えてきました。大産地を形成してスケジュール通りに化学肥料や農薬を散布し、同じ作物を連続して生産し、できる限り工業製品を生産する形に近づこうとしてきました。それで一見うまくいくように思えたのですが、一方でうまく計測できない生物性については、あまり配慮してきませんでした。むしろ、土壌微生物や田畑の生き物は農作物に悪さをするものだと思われて排除されてさえいました。その結果、気がつけば土の持っている素晴らしい機能が失われてしまい、多くの土壌で微量要素が不足し、土壌病害が発生し、田畑の涵養機能が乏しくなってしまいました。現代農法の盲点でした。

 土の生物性を考えることは、土が土であるために、最も大切な部分だったのです。土壌微生物がいなければ、土の中の有機物は分解されませんから、適切な養分を吸収可能な形で植物に与えることが出来ませんし、分解後に残る腐植ももたらしません。団粒構造も失われてしまいます。そもそも土壌微生物自体が土の構成要素であります。言いかえれば、土壌の生物性が悪化すると、化学性も物理性も悪化することとなります。そしてそこに育つ植物は、不健康になってしまいます。

  こういったことから、近頃は土壌の生物性について関心を持つ農業者が増えてきました。正しい「土作り」とは、土壌の生物性を向上させることで、化学性と物理性も向上させることを指します。さまざまな方法で土づくりを行って、品質の高い農産物の生産を目指す生産者が注目を浴びています。そして、かつては異端視されてきた有機農業も見直され、現在では法律として推進が定められる程になりました。
 

土壌微生物をいかに評価するか
 土壌微生物とは、細菌、放線菌、糸状菌、藻類、原生動物、線虫などの土の中にすむとても小さな生き物の総称です。土の生物性を考える上で、この土壌微生物について考えるのはとても重要なことです。
  しかしながら、病原菌や抗生物質産生菌など、人間と関わりを持った特定のバクテリアやカビなどについて、その機能の一部が明らかになってはいますが、それ以外の大多数の土壌微生物の機能はわかっていないのが現状です。土壌微生物は土1g中に数億から数兆存在すると言われており、その機能を一つずつ把握するのは非現実的だからです。加えて、土壌微生物は土とともにあることで生きていられることが多く、その機能を調べるために分離培養しようとしても、うまくいかないことがほとんどです。DNAを解析することで微生物の種類を特定したり新種の微生物を見つけたりする研究がありますが、新しい微生物がいることが分かったとしてもその機能は機能が分からないので生物性を評価するには不十分です。

 そこで研究開発されたのが、土壌微生物多様性・活性値です。これは、微生物ひとつひとつを調べるのではなく、土に住んでいる微生物全体で、どれくらいたくさんの種類の有機物を、どれくらい勢いよく分解できるかを調べて、その結果から微生物の多様性と活性を評価するものです。特定の微生物の分離も培養もせずに、土を薄めて試験プレートに入れて、いろいろな種類の有機物の分解の仕方を時系列で測ります。簡単にいえば、顕微鏡で微生物を見つけ出して数を数えるのではなく、一定の餌を与えてその食べっぷりを見ることで、微生物世界を見える化する技術です。こうすれば、分離・培養できない微生物や未知の微生物についても評価することができ、また土に含まれている微生物の総合力を評価できるため、土壌の生物性を客観的に判断することが出来ます。
  土壌微生物多様性・活性値を活用して、土の生物性を知り、よりよい土作りのベンチマークにすることで、適切な土づくりを行うことができ、豊かな土によって植物を元気においしく生産することができます。すでに多くの農業生産者や、大学・研究機関、食品メーカー、農業資材関連メーカーの方々にご利用いただいております。
 

農とは、土とは

 農は命を育むものです。土は農の根幹です。

 土壌の化学性と物理性にのみ注力して、化学物質の投与で植物を育成するのは、もはや時代遅れの技術です。
 最先端の農業とは、土の生物性を向上させ、自然の恵みを十分に生かして効率的な生産をする農業のことです。それは同時に、環境負荷をかけない、持続的な農業でもあります。 最先端の農業とは、おいしくて健康な農産物を消費者に提供し、社会に幸せをもたらす、素晴らしい産業なのです。

(c) Naomi SAKURAMOTO 2013 禁無断転載

 

 

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